アイルランド映画

アイルランド映画の歴史

アイルランドの映画産業は近年になって勢いをつけてきています。政府が母体となって映画産業を促進する「アイルランド映画委員会」の存在と、映画産業に対する減税措置がその大きな要因のひとつといわれています。アイルランドでは過去、カトリック教会の影響力により、多くの映画が検閲を受けたり上映禁止になることもありましたが、現在では基本的には観客の選択に任せるという「Irish Film Censor's Office」の方針を採っており、このような措置を受けた作品は2004年に1本、2005年に1本、2006年に1本と減ってきています。映画史初期の頃から、アイルランドを舞台にした作品は多く、外国人が制作しアメリカやイギリス資本で作られる場合が多かったようです。アイルランドで撮影された初めての映画は1910年の「The Lad from Old Ireland」でした。

アイルランド映画委員会

アイルランド映画委員会は1981年に設立されました。設立の目的は地元の映画産業振興のためでした。しかし、多くの批評家たちは、アイルランド映画委員会がかかわった作品はほとんどヒットせず、低予算で作られた作品や海外資本の作品の方が人気があると指摘しています。

代表的なアイルランド映画

近年ヒットしたアイルランド映画を紹介します。

1991年「ザ・コミットメンツ」

イギリスとアイルランドの合同で製作された映画です。ロディ・ドイルの小説「おれたち、ザ・コミットメンツ」を映画化した作品で、ダブリンを舞台に、何度もメンバー・オーディションを繰り返しながらソウルバンドを結成し、それにかける若者たちを描いています。

1996年「マイケル・コリンズ」

イギリス・アイルランド・アメリカの合同作品です。アイルランドの独立運動家であるマイケル・コリンズの生涯を描いています。2005年時点でアイルランド本国では第2位、アイルランド制作の映画に限ると第1位の興行収入を記録した大ヒット映画です。主演はリーアム・ニーソン、監督はニール・ジョーダンで、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞しました。

1999年「アンジェラの灰」

アラン・パーカー監督により、フランク・マコート作の同名小説を映画化した作品です。極貧生活をけなげに生きる少年の姿を繊細なタッチで描いています。

アイルランド人映画監督

映画史初期の頃は、アイルランドを舞台にした映画は外国人が制作することが多かったのですが、1970年代に入ってアイルランド人監督が注目されはじめ、アイルランド人によるアイルランド映画が多くなってきています。

ニール・ジョーダン

アイルランドのスライゴ州スライゴ出身の映画監督・脚本家です。アイルランド国立大学ダブリン校で学び、ゴシック・ホラーや歴史物、恋愛物などを手がけ、ハリウッドで活躍するアイルランドを代表するストーリーテラーです。「クライング・ゲーム」でアカデミー脚本賞を、「マイケル・コリンズ」でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を、「ブッチャー・ボーイ」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞しています・

ジム・シェリダン

アイルランド・ダブリン出身の映画監督・脚本家です。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを卒業し、ハリウッドを中心に活躍しています。1993年に「父の祈りを」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞しました。2005年にはラッパーの50セントを主役に迎えた音楽映画「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」を監督し、話題となりました。娘のカーステン・シェリダンも映画監督で、「奇跡のシンフォニー」などを監督しています。

アイルランドで撮影された映画

アイルランドは減税措置のおかげもあって、映画撮影の盛んな土地でもあります。

1952年「静かなる男」

ジョン・フォード監督と主演のジョン・ウェインのコンビによる名作人情喜劇です。アメリカを離れて自分のルーツであるアイルランドに移り住む主人公ショーン・ソーントンには、アイルランド移民の子であるジョン・フォード自身の郷愁が込められています。西アイルランドの海岸近くの村で撮影された本作は、アカデミー賞の7部門にノミネートし、監督賞、カラー撮影賞の2部門を受賞しました。

1995年「ブレイブハート」

スコットランドの独立のために戦った実在の人物ウィリアム・ウォレスの生涯を描いた歴史映画です。俳優のメル・ギブソンが主演と監督を務めました。アカデミー作品賞、アカデミー監督賞、アカデミー音響効果賞、アカデミーメイクアップ賞、アカデミー撮影賞を受賞した名作です。

2002年「サラマンダー」

アメリカとイギリスの共同で製作された怪獣映画です。西暦2020年、巨大な竜「サラマンダー」に支配された世界を舞台に、人間対巨大竜の生き残りをかけた戦いを描いています。監督はロブ・ボウマンで、主演はクリスチャン・ベールが努めました。

2004年「キング・アーサー」

中世騎士伝説として著名な「アーサー王と円卓の騎士」のモデルである、古代末期に実在したブリトン人の抵抗指導者・アルトリゥスを、彼がローマ軍のサルマティア人傭兵を率いる指揮官であったのではないかという歴史学上の仮説をベースにダニ単に解釈した歴史映画です。主人公アーサー役をクライヴ・オーウェンが、ヒロインのグウィネヴィアをキーラ・ナイトレイが演じました。

アイルランドの映画館

1909年、ジェイムズ・ジョイスの手によって、アイルランドにはじめての映画館がオープンしました。現在最も大きなシネコン・チェーンはウォード・アンダーソンで、他にもユナイテッド・シネマズ・インターナショナルや、シネワールド、ヴューなどのシネコンがあります。最も大きなインディペンデント系映画館チェーンはストーム・シネマで、ベルファスト、リムリック、ウォーターフォードなどの都市に映画館を持っています。2005年には新しいシネコン「Movies@」が参入し、ダブリンとゴールウェイに映画館をオープンしました。